【健康経営の定義と考え方】 2016年4月に公表された「企業の『健康経営』ガイドブック(改訂第1版)」(経済産業省)によると、健康経営とは、「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性を高める投資であるとの考え方の下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と記載されています。 引用:健康経営アドバイザー・エキスパートアドバイザー共通テキスト 2023-2024 |
(はじめに)
令和6年10月に東京商工会議所から『健康経営エキスパートアドバイザー』(以下、エキスパートアドバイザーといいます。)の認定を得ました。今回はこのエキスパートアドバイザー制度についてご紹介します。
このエキスパートアドバイザーは東京商工会議所が主催するもので健康経営アドバイザー(以下、アドバイザーといいます。)の資格を取得した者を対象とした認定資格でエキスパートアドバイザーになるためには、まず、アドバイザーとなる必要があります。
(なにをすることが求められているか)
アドバイザーとエキスパートアドバイザーとの違いは大きく分けて自社内での健康経営推進スタッフとしての位置づけ又は生損保会社の担当者等が健康経営普及者として中小企業へ健康経営に関する事項の普及・啓発を目指すものであるか、それとも、中小企業への実践支援となることを想定しているかが大きな違いとなっており後者がエキスパートアドバイザーの役割となっています。
(試験について)
また、資格取得のステップにも違いがありアドバイザーはテキスト解説の動画視聴後の学科試験のみで受験方法はオンラインによる実施であるほか合格するまで何度も受験が可能なものとなっています。テキストをある程度理解できればほぼ1回の受験で合格できると思います。合格ラインは70点です。
次にエキスパートアドバイザーは東京商工会議所にアドバイザー登録があることに加え一定の資格(例:中小企業診断士、社会保険労務士、労働衛生コンサルタント、保健師、看護師、公認心理士、衛生管理者等々18の資格が対象です。)又は「健康」、「医療」、「保健」に関する実務や「経営」に関する実務、「人事労務」・「健康経営」に関する実務経験が1年以上ある者が受験資格となっています。
試験は知識確認試験という学科試験とグループワークそして効果測定という課題の作成というステップを経て認定(資格取得)につながるというものになっています。 学科試験はアドバイザー試験のように自宅ではできず、駅前など全国300か所用意された試験会場(商工会議所が契約した試験会場)に赴きそこで所定の部屋入り(私の場合は広いスペースにパソコンが10数台あり両サイドが仕切られたブース内で受験しました。)指定されたパソコン画面に出された問題を順に解いていくというものでした。ちなみに筆記用具以外のものはロッカーに仕舞ってから試験室に入場することになります。試験概要は多肢選択式 50問 90分で合格基準は80点以上です。
この知識確認試験に合格すればワークショップの受講資格を得られるという順序になっています。
ワークショップは1グループ5~6人(商工会議所がグループ分けをします。)で所定の課題について進行役や発表役を決め、あらかじめ設定された企業に対して課題点を明らかにするとともに改善点や課題解決手法を案内するというものでした。(ちなみに実施はズームでの実施であること、初対面の方々であること、年齢性別経歴も様々であることから発言に積極的な方とそうでない方に明確に分かれますが各人に発言を求めるとそれなりの回答を皆さん用意されていました。~私は進行役をすることになってしまいましたのでバランスよく発言を求めるほか、課題解決に行き詰った場面では少しでも場が盛り上がり、様々な視点から発言がしやすくなるようにと積極的に発言される方の協力も求めながら対応しました。
私のグループには健康経営関連と思わしきコンサルタント会社の担当者や保健師、公認心理士の方など専門分野が様々であったことから討議の中でも各専門分野の視点からの発言があり専門分野ごとの強みや思考傾向などがわかる機会になりました。(なお、詳細は、ワークショップ受講時の守秘義務に抵触するためお伝えすることは出来ません。)
ワークショップは午前午後とほぼ一日かけて実施するもので、健康経営診断報告書の作成方法を学ぶほか、作成できる能力を身に着けることが求められています。グループワークでは課題に対しグループ単位で報告書を作成するのですが、時間が限られていることや専門性を生かして「健康経営診断報告書」を作るには労働安全衛生法や同規則、関係する告示(指針等)についての知識を駆使し法をクリアーできる状況であることのチェックやその対処方法、健康経営で目指す方向に関するアドバイスがあり、これまでの実務経験や知識確認試験の学習時に得た基本知識がベースにあることが前提となってきます。
(ワークショップの合格基準)
- 研修とは異なる事例企業の情報に基き「健康経営診断報告書」を作成し、期限日までに提出すること。
- 効果測定が80点以上の正答であること。
以上をクリアーした者が「健康経営エキスパートアドバイザー」として認定されることになっています。
私の場合はこれまでの行政経験や社会保険労務士試験、労働衛生コンサルタント試験での学習によりハードルが高くはないものでしたが、「健康経営診断報告書」の作成ではいかにも役人が作成したような堅く、上から目線のような表現や言い回しなっていないかなど課題の作成に際して特に留意しました。
参考までに知識確認テストの合格率は66~67%で受験者の約1/3が合格し、そのうちワークショップの合格者は95%前後となっているようです。合格率だけで見ると試験は容易な部類に入るかもしれませんが一定の実務経験や資格試験の学習等によって養われた知識や文章作成能力が関わってきますので、誰でもとか短時間の学習で合格するものではないのかなと評価しています。
【健康経営に関する実践のポイントについて】 定期健康診断の受診率を100%にすること。受診勧奨への取り組みヘルスリテラシー向上のための教育機会の設定適切な働き方の実現職場の活性化職場の環境整備コミュニケーションを促進する取り組み病気の治療と仕事の両立支援保健指導・特定健診・特定保健指導食生活の改善助成の健康保持・増進感染症予防対策メンタルヘルス不調者への対応受動喫煙対策高齢従業員特有の健康課題への対応腰痛改善睡眠の向上歯・口腔の予防PDCAサイクル (以上は、健康経営アドバイザー・エキスパートアドバイザー共通テキスト 2023-2024からのものです。) これだけ多岐に及んでいるため相談への対応は、一般的には一人のエキスパートアドバイザーだけで対応できるものではないため項目によっては保健師や栄養士、その他専門機関をご案内することがあります。 当事務所では総合的な観点から各課題をとらえ状況に応じて優先度の扱いや必要な情報の入手先や関係機関をご案内することにより経営者、ご担当者様へ適切な方向性を示し、管理体制上の課題を明らかにし経営に寄り添ったコンサルタントを目指しています。 |